「あのね、私はいつも、実験や何かできることがあれば、いつでもやったほうがいいと思っているんだ。 そこから何が生まれるかわからない。 今日だって、娘たちがアイデアを出してきたら、そう思う。 何が起こるかわからないからだ。 -ウォルト・ディズニー
「The Imagineering Story」第15章 [ 要約 ] :1980年代半ばから1990年代初頭にかけて、イマジニアリングはテーマパーク外でのエンターテイメント展開とアニメーション映画のアトラクション化に取り組みました。メリウェザー・アダム・プレジャーという架空の実業家の物語をベースにした「プレジャー・アイランド」の開発、そしてヒット映画『ロジャー・ラビット』を基にした「ミッキーのトゥーンタウン」の建設がこの時期の重要なプロジェクトでした。これらは創造的な成功を収めましたが、予算超過や対象顧客の把握に課題がありました。
第15章「喜びとウサギ」PLEASURE AND RABBITS
I. パークなしのテーマ
– 1980年代半ば、イマジニアが架空の実業家メリウェザー・アダム・プレジャーの物語を創作
– この物語をベースに「プレジャー・アイランド」が1989年にウォルト・ディズニー・ワールドに開業
– RD&E(小売、飲食、エンターテイメント)の複合施設として、特に若い大人向けの夜間エンターテイメント施設として構想
– 施設内の各建物には、メリウェザー一家の物語に基づいたバックストーリーが設定された
– マイケル・アイズナーのアシスタント、アート・レヴィットが集客のための革新的なアイデア(毎晩の大晦日カウントダウン、セレブリティの出演等)を導入
– 初期は予算を大幅に超過し、集客に苦戦したが、1993年までに黒字化
– 2000年代初頭に人気が低下し、2008年にナイトクラブが閉鎖され、より家族向けの施設へと変貌
– 「ミッキーの10の戒律」がこの時期に明文化され、イマジニアリングの指針となる
1. 観客を知ること
2. ゲストの靴を履くこと(ゲストの視点で考える)
3. 人とアイデアの流れを整理すること
4. 「ウィニー」(視覚的マグネット)を作ること
5. 視覚的リテラシーで伝えること
6. 情報過多を避けること
7. 一度に一つの物語を語ること
8. 矛盾を避け、アイデンティティを維持すること
9. 仕掛けを1オンスに対し、楽しさを1トン提供すること
10. 維持し続けること(現状に満足せず、メンテナンスを怠らないこと)
II. ハリウッドランド
– ディズニーのアニメーションに基づく新アトラクションが長らく不足していた状況
– 1988年のヒット映画『ロジャー・ラビット』がパークアトラクション化の絶好の機会に
– 当初、「ディズニー・デケード」計画の一部として、ディズニーMGMスタジオとディズニーランドの両方にロジャー・ラビット関連のアトラクションを建設予定
– ディズニーランドの「ハリウッドランド」計画は1991年に中止
– 代わりに「ミッキーのトゥーンタウン」が1993年1月にディズニーランドにオープン
– 主要アトラクション「ロジャー・ラビットのカートゥーン・スピン」は翌年1月にオープン
– このダークライドでは、乗客がライド中に車両を回転させることができるという革新的な要素を導入
– 予算オーバーなどの問題からイマジニアリング従業員の大規模レイオフが1992年に発表された
この章から読み取れる重要なポイント:
1. ディズニー体験の拡張: テーマパーク以外の場所(RD&E複合施設)へのディズニー体験の拡張の試み
2. イマジニアリングの指針化: 「ミッキーの10の戒律」の明文化によるイマジニアリングの原則の体系化
3. インタラクティブ性の強化: 「ロジャー・ラビットのカートゥーン・スピン」における乗客がライドをコントロールできる要素の導入
4. 事業拡大と財政的課題のバランス: 創造的な成功と財政的現実(予算超過、レイオフ)の間の緊張関係
5. ターゲット設定の重要性: プレジャー・アイランドの事例が示す、適切な対象顧客の把握(「ミッキーの10の戒律」の第1条)の重要性
「ミッキー10の戒律」イマジニアリングの指針。
「ミッキーの10の戒律」は本当に興味深いですね。イマジニアリングの創造プロセスを支える基本原則として、単にテーマパークの設計だけでなく、あらゆるプロジェクトに適用される普遍的な知恵が詰まっています。
特に「ゲストの靴を履く」という発想、「1オンスの仕掛けに対して1トンの楽しさを提供する」という考え方は、エンターテイメント業界に限らず、サービス設計やプロダクト開発など様々な分野で応用できる考え方。
ディズニーが長年にわたって愛され続けている理由の一端が、こういった明確な指針にある
“創造的な成功”とは、この章の中の「ミッキーのトゥーンタウン」のこと。
「創造的な成功」とは、主に「ミッキーのトゥーンタウン」のことを指す。この章では、トゥーンタウンが特に子供たちに人気を博し、「カラフルで触ったり、登ったり、這い回ったりする機会」を提供したことが述べられています。
「ロジャー・ラビットのカートゥーン・スピン」も革新的なライド体験(車両を回転させる操作性)を提供し、当時「イマジニアが作った中で最大かつ最長のダークライド」と評されるほどの創造的成功を収めました。
プレジャー・アイランドも、ストーリーテリングの観点では創造的な試みでしたが、章の内容からは、トゥーンタウンの方がより純粋な創造的成功として描かれていると解釈できます。財政的な課題はあったものの、これらのプロジェクトは来場者体験という点では高く評価されていたことが伝わってきます。