第25章 『変化の重要性』The Imagineering Story

「お客様は、初めて訪れた時と同じように、全てがそのままでいてほしいと願っています。しかし、それは決して良い考えではありません。なぜなら、物事は古臭くなってしまうからです。ウォルトは、これらのアトラクション全てを最新のものにしたいと考えていました。繰り返しますが、これは時代遅れのものです。彼は何度も『この施設を活気に満ち、新鮮で、新しいものに保ち続けなければならない』と言っていました。」 – キム・アーバイン

「The Imagineering Story」第25章 [ 要約 ] 本章では、ボブ・アイガーがディズニーのCEOに就任してからの方針転換と、古典的なアトラクションの更新をめぐる議論が描かれています。アイガーは「伝統を尊重しながら革新する」というバランス、知的財産の拡充(ピクサーの買収など)、技術革新、国際展開という3つの原則を掲げました。一方、「カリブの海賊」「スモールワールド」「潜水艦航海」など古典的なアトラクションの更新は、常にファンからの抵抗を伴いました。しかし、実際にはウォルト・ディズニー自身が「常に新鮮さを保つ」ことを重視していたように、イマジニアリングにとって「変化」は常に重要なテーマであり続けていることが描かれています。

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第25章「変化の重要性」
THE IMPORTANCE OF CHANGE

I. アイガーの就任とピクサー買収

   – 2005年の香港ディズニーランド開園時のパレードでアイガーが重要な気づきを得る

   – 当時のディズニーキャラクターはウォルト時代の古いものとピクサー作品の新しいものに二分されていた

   – 2006年1月24日、ディズニーは74億ドルでピクサー・アニメーション・スタジオを買収

   – スティーブ・ジョブズはアイガーとの関係を買収決断の理由として挙げる

II. アイガーの3つの経営原則

   – 「伝統を尊重しながら革新する」というバランス

   – 新しく質の高いクリエイティブ・コンテンツ

   – 技術革新

   – 国際展開

   – アイガー:「ウォルトは何かを作って、そのままにしておくようなことはしなかった」

III. エクスペディション・エベレストの開発

   – ディズニー・アニマルキングダム初の大型アトラクション

   – 中間で方向が逆転する革新的なコースター技術

   – ジョー・ロードの指揮のもと、ヒマラヤ山脈文化の詳細な研究に基づく設計

   – ネパール人アーティストによる装飾、意図的に「200年前」の風合いに仕上げる

   – 4D技術:時間軸まで含めた4次元コンピューターモデリングの活用

   – イエティ(雪男)のオーディオ・アニマトロニクスは技術的問題で動かなくなる

IV. イマジニアリングの組織再編

   – 2007年、マーティ・スカラー退任後、ブルース・ヴォーンとクレイグ・ラッセルが共同リーダーに

   – 2009年、プロジェクトベースからポートフォリオシステムへの移行

   – 各リゾート(アナハイム、オーランド、東京、パリ、香港)に恒久的なクリエイティブリーダーを配置

   – 「物理的な場所よりもゲスト体験を優先する」という理念の再確認

V. ユニバーサルとハリー・ポッターの脅威

   – 2007年5月31日、ユニバーサル・オーランドがウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターを発表

   – 2010年6月オープン、2014年にはダイアゴン横丁を含む第2フェーズを予定

   – トム・モリス:「ユニバーサルは本当に対抗相手となった。美しい場所作り、素晴らしいショップやレストラン」

VI.「カリブの海賊」アトラクションの更新論争

   – 1997年、性的暗示のあるシーンを変更(追いかけられる女性→ワインの盆を持つ女性、チキンを追いかける海賊など)

   – 2006年、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の成功を受け、ジャック・スパロウなど映画キャラクターを導入

   – 2018年、花嫁オークションシーンを最終的に変更、赤毛の女性は海賊クルーのリーダーに

   – キム・アーヴィン:「ウォルトはこれらのアトラクションを更新したいと思っていた。関連性を保つことが大切」

Ⅶ.「スモールワールド」と「潜水艦航海」の更新

   – スティーブ・デイビソンによる「スモールワールド・ホリデー」の成功

   – ティム・バートンの『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』を取り入れたホーンテッドマンションの季節限定リニューアル

   – 2008年、「スモールワールド」に古典的ディズニーキャラクターを追加する計画が大きな論争を呼ぶ

   – トニー・バクスターによる「ファインディング・ニモ潜水艦航海」の復活

   – 40の窓に同期したサウンドシステムなど、見えない技術革新

この章から読み取れる重要なポイント:

1. アイガーのリーダーシップは「尊重と革新のバランス」という哲学に基づいており、これはウォルト・ディズニー自身の「パークは完成しない」という考え方に通じている

2. ピクサーの買収は単なる企業買収ではなく、ディズニーブランドの将来と魅力的なアトラクションのための知的財産を確保する戦略的決断だった

3. テーマパークビジネスでは、競合(特にユニバーサルとハリー・ポッター)の存在が、より革新的なアトラクション開発を促進する健全な緊張関係を生み出している

4. 「変化」と「伝統」のバランスは常にイマジニアリングの中心的な課題であり、ファンからの抵抗を恐れずに革新を続けることの重要性が強調されている

5. 効果的なアトラクション更新のポイントは「オリジナルの意図を尊重しながら、同等かそれ以上の体験を提供すること」にある

6. 技術革新(4Dモデリングなど)の目的は最終的には「見えないこと」であり、技術そのものよりもシームレスなゲスト体験を実現するための手段として位置づけられている

7. アトラクション更新をめぐる論争の多くは「想像上の恐れ」に基づいており、実際に体験すると多くのゲストは変化を受け入れ、楽しむことができる​​​​​​​​​​​​​​​​

アイガーの「尊重と革新のバランス」という哲学が如実に語られている箇所

アイガーの「尊重と革新のバランス」という哲学が明確に表現されている箇所は、以下の引用

> 「私がCEOとして試みたことは、私たちの伝統への敬意と革新の必要性との間に真の均衡を作り出すことです。」(“What I’ve tried to do as CEO is to create a real balance between respect for our heritage and the need to innovate,”)

この後、アイガーは次のように続けています:

> 「私たちが会社として持っているものは非常にユニークです。なぜなら、その伝統が非常に特別だからです。ウォルトだった伝統、ナイン・オールド・メンだった伝統、イマジニアリングの始まりだった伝統、ディズニーランドのオープン、あの素晴らしい映画、ディズニーランド建設についてのテレビ番組。様々な方向を見れば、この豊かな伝統を見出すことができます。それは今日でも通用するものです。それはまだ温かく、まだ魅力的で、まだエンターテイニングであり、それを捨てる必要も、それを軽蔑する必要もありません。また、それを崇拝する必要もないと思います。なぜなら、何かを崇拝すると、何も変えたくなくなり、それを博物館のケースに入れてそのままにしておくようなものになるからです。私はそうしたくありませんでした。過去の価値観と過去を尊重することが、現在にいる私たちや未来を創造することの妨げになることを望みませんでした。」

この発言は、アイガーの哲学の核心を表しています:ディズニーの豊かな伝統は温かさと魅力を持ち、捨てるべきではない。しかし同時に、その伝統を「博物館の展示品」のように崇拝し、変化を拒むことも避けるべきである、という考え方です。

また、アイガーはウォルト・ディズニー自身も常に変化を求めていたという点を強調しています:

> 「この会社は決して立ち止まることはありませんでした。ウォルトは何かを作ってそのままにしておくような人ではありませんでした—ミッキーマウスを含めて。長年にわたり、ミッキーは変化してきました。なぜならウォルトは時代が変わることを知っていたからです。」

この箇所からも、アイガーは自身の「尊重と革新のバランス」という哲学がウォルト・ディズニー自身の精神に沿ったものだと考えていることがわかります。​​​​​​​​​​​​​​​​

時代がかわれば、“ミッキー”もかわる…ウォルトは絶えざる変化を求めていた、

ウォルト・ディズニーの哲学における「変化」の重要性,、素晴らしいですね。

ミッキーマウスの変遷はその良い例です。1928年の『蒸気船ウィリー』のミッキーと現代のミッキーを比べると、目の形、体のプロポーション、動きの表現など、多くの点で進化しています。しかし、その本質的な魅力や性格は保たれています。

これこそがアイガーの言う「尊重と革新のバランス」の実践例です。アトラクションの更新も同様の考え方で行われています。「カリブの海賊」や「スモールワールド」の更新は、その本質を維持しながらも、時代に合わせて少しずつ変化させていくという姿勢の表れです。

ディズニーの成功の一因は、この「伝統を守りながらも時代に合わせて進化する」という柔軟さにあると言えるでしょう。

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